介助犬が育つまで2:トレーニング開始以降
犬が1歳になると協会に入所し、基本訓練、介助作業訓練、パブリック訓練を行います。期間は犬の性格、仕事内容によって異なりますが、約6ヶ月~1年が目安となります。
介助犬の適性がないと判断された犬は介助犬のトレーニングプログラムからははずし、多くはペットとして一般のご家庭に飼っていただきます。
トレーニング方法
介助犬のトレーニングは犬との信頼関係の下に行われます。その犬が生まれながらに持っている得意なことを見極め、それを作業に結び付けていきます。つまり、犬を力で押さえつけて言うことを聞かせるのではなく、うまく出来た時にタイミング良く褒めることで、信頼関係を築きながらトレーニングするのです。
この方法はトレーニング中の犬に過度の負担がかからず、それぞれの能力・個性を最大限に生かして育成ができます。
介助犬は人と一緒に作業を学んでいくことが喜びと感じられる体験を通じて、無理なく自然に仕事をこなせるようになります。
指示語
犬に対する指示は簡潔な単語に限ります。
当会では動詞は英語、名詞は日本語で教えています。
日本語の動詞には様々な言い回しがあるため、英語のほうが教えやすいですし、犬も理解しやすいのです。
例えば「新聞を持ってきて」なら「TAKE 新聞」と言います。
基本動作と介助作業を合わせて、トレーニング終了までに約50の指示を教えます。
トレーニングにおける基本的な考え方
訓練犬は約1年間、トレーナーと共に色々な場所へ行き、どのような状況下でも興奮することなく、人間に対して集中できるようトレーニングをしていきます。犬が知らない事をひとつひとつトレーナーが伝えていくことで、犬も徐々に慣れていき、そして自信につながっていきます。
もともと好きだった遊びが介助作業へと変わっていくので、犬も楽しみながら仕事を覚えていくということになります。そして、大好きなパートナーから「ありがとう。本当に助かった。」と喜ばれることで、犬も誇りを持って仕事をしてくれるようになります。人間と犬との共存がそこにはあります。もちろんお互いに愛があってこそです。
もし、トレーニングの段階で暴力的な行為を犬にしてしまうと、犬には人間に対する恐怖心が生まれその犬がもつ本来の可能性を失う事になってしまいます。だから私達は、いつでも犬の気持ちを読み取ることを心掛けています。そうすることで、犬も私達人間の気持ちを知ろうとしてくれるのです。
ある介助犬の使用者さんが、こんなことを私達におっしゃっていました。
「人間対人間も、犬対人間も、心が伴わなければ動いてはくれませんから・・・。」
トレーニング例 - 1

ひもを引っぱって電気をつける仕事は、どういう方法で教えるの?
- 生活の中で、犬と引っぱりっこをして遊んであげます。犬がグッと引っぱった時に「PULL」と言葉をかけ、「PULL」という言葉の意味を教えます。
- タオルを渡して「PULL」と声をかけ、犬が引っぱるかどうか試してみます。もし、引っぱらなかったらまた引っぱりっこをして遊びます。
- 「PULL」が分ってきたら引っぱるときに色々加減が必要だということを教えます。声を落として優しく「EASY TAKE」と言うと、自然に犬も優しくくわえるようになってきます。
- 電気のひもは、強く引っぱると傘ごと落ちてしまうので、「EASY TAKE」→「PULL」と指示すると、優しくひもを引っぱるようになります。「GIVE」と指示するとひもを放します。
さらにこれができれば、ドアについたひもやタオルを引っぱって、開けたり閉めたりも出来るようになり、飼い主の足をかまないように、靴下だけをくわえて足をひっぱり上げることも出来るようになります。
トレーニング例 - 2
エレベーターのボタンを押す仕事は、どういう方法で教えるの?
- ボールで遊んだりじゃれている時に、前足で人の体に触るような行動が出てきたら「GOOD TOUCH」と言葉をかけて、「TOUCH」の言葉の意味を覚えさせます。
- 紙に目立つように丸印を書いて、床に置き、「TOUCH」と指示します。トレーナーも一緒に丸印に触ってみせて、まぐれでも犬が丸印に前足をおいたら、「GOOD TOUCH」と誉めます。
- それが出来たら、その紙を壁に貼り付けて、「TOUCH」と指示をして、どんな場所でも目標物を前足で押せるようにしていきます。低い所に貼り付けた時は「SIT」をさせてから「TOUCH」と指示します。高い所は「UP TOUCH」と指示します。良く出来たらよく誉めます
- エレベーターのボタンを押すのは、「UP TOUCH」と同じ方法で、この時は「UP TOUCH ボタン」と指示します。
介助犬の公共の場でのトレーニング
アメリカでは食料品であっても介助犬が陳列棚から商品をくわえて取ってきますが、日本では、店舗内においては、文具、 日用品、使用者が床に落とした物のみ、介助犬が拾うことができます。食料品売り場、衣料品売り場に関しては、多くの店舗では従業員の方が付き添ってお手伝いをしてくれることになっています。これは、まだ社会的認知度の低い介助犬に対して、他のお客様にもご理解いただけるよう考えられたことです。
また、換毛期には介助犬に洋服を着せるなどして抜け毛が落ちないように配慮し、一般の方々の理解が得られるように勤めています。



